絵本
『 エップのひっこし
きいろいおうちのゆかいな人たち』

エップは、きいろいおうちの3階へ引っ越します。
このおうちには誰が住んでるの?
新たな冒険のはじまりです。
フィンランドで生まれたこの絵本は、
文化の多様性を受け入れ、
違いを楽しむことを教えてくれます。
人と出会うことや新しい一歩を踏み出す
勇気を与えてくれるでしょう。

『エップのひっこし きいろいおうちのゆかいな人たち』作: Jenni Erkintalo 、 Reka Kiraly
訳: 島塚絵里
日本語装丁: 小熊千佳子
編集、文字デザイン:オノイチコ
Original Finnish title: Talo kulman takana
サイズ:21cm x 24 cm
ページ数:32
発売日:2024年5月31日
発売元: KORVAPUUSTI

購入する

Preview試し読み

photo

作者

Jenni Erkintalo / Réka Király

photo

Jenni Erkintalo:フィンランドのラウマ出身。ヘルシンキを拠点に活躍するグラフィックデザイナー、イラストレーター、絵本作家。
2014年に絵本の出版社Etana Editionsを共同で設立。


Réka Király:ハンガリー出身。ヘルシンキを拠点に活躍するグラフィックデザイナー、イラストレーター、絵本作家。
2014年に絵本の出版社Etana Editionsを共同で設立。

Q&A

1.この絵本どのような発想や経験から誕生したのですか?

2011年頃、私たちは同じ物件に住んでいました。
2人で絵本を作る話をしていた際、多様性についての絵本を作りたいと考えていました。多様性を考える時、自分たちの住んでいる環境そのものではないかというところからこの絵本が誕生しました。私たちが以前住んでいた黄色い建物は、今もヘルシンキにあります。

2.主人公エップについてお聞かせください。

ジェンダーフリーなキャラクターを考えていました。エップは、男女どちらでもあり得るニックネームです。ボサボサの髪の毛も男女関係ない表現となっており、躍動感が、今にも走り出しそうな、好奇心の塊のような存在としての主人公を表しています。
新しい環境でゼロから自分の居場所を構築していくことはとてもタフなことです。引っ越しは、大人にとってはもちろんのこと、子供にとっても大きな出来事です。

3.この絵本を作る中で大切にした部分を教えてください。

大きく分けて二つのことを考えました。1つ目に、子供が自由に創造性を発揮できるように、広い視点を持てるようにと考えました。2つ目には、同じ屋根の下で様々な人々が暮らすような多様性を大人も子供も信じられるように、理解できるようにと絵本を作りました。
読者の方が誰でも自分の生活を投影できる作品に仕上がったと思います。

4.お二人それぞれとって絵本はどのような存在ですか?

Jenniさん

作者として

自分自身の生活や内面、世界で何が起こっているのかを投影させるのに一番自然な存在です。これにより、読者に思考を促すことができる存在だと思います。

読者として

親と子供という一対一の関係性の中で、他の人の視点を取り入れるのはとても大切です。例えば、「お母さんはこう思うからこれが正しい」ではなく、「お母さんはこう思う。(絵本によれば)別の考え方をする人もいるみたい。あなたはどう思う?」と子供との関係性を構築するのに、絵本は大切な存在です。


Rekaさん

作者として

絵本は、子供に経験してほしい世界へのドアのような存在です。 絵本は年代を超えて愛され、子供が大人になってもその人の中に残るものです。
子供の中に蓄積されるものを作っているという意識はいつも持っています。
子供達に新たな世界へのドアを示し、結果として彼らの中に将来に渡り残っていくような仕事をしたいと思っています。

読者として

子供が小さいときは毎晩絵本を読んでいました。読み聞かせをすることが子供の言語習得のためにも必要でした。
子供が大きくなった今、自分自身も子供の頃に読んでいた絵本をたまに読みます。子供の頃に戻るひとときが必要な時間が人生にはあると思います。実際、忙しい大人としての毎日には絵本を読むタイミングがあまりないのも事実ですが、本当は絵本こそ、大人にも必要な要素がたくさん詰まっていると思います。
大人が絵本をもっと読むようになったら、世界は今より良くなるはずです。大人になるにつれ、失くしてしまう柔らかさを、絵本が補ってくれるから。

photo

訳者

島塚絵里

photo

絵・訳 島塚絵里(しまつか えり)
フィンランド在住のテキスタイルデザイナー、イラストレーター。津田塾大学で国際関係学を学び、東京と沖縄で英語教員を勤めた後、フィンランドに移住。アアルト大学でテキスタイルデザインを学び、テクニカルデザイナーとしてマリメッコ社に勤務後、2014年より独立し国内外の企業にデザインを提供する。著書に『北欧フィンランド配色ブック』(玄光社)、『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』(パイ インターナショナル)など。
http://www.erishimatsuka.com/

Q&A

1.フィンランド語版の絵本『Talo kulman takana 』の第一印象をお教えください 。

鮮やかな色彩がとても印象的でした。次々と個性的なアパートの住人たちに出会っていく様子に、ワクワクしながらページをめくりました。

2.訳の中で苦労した点や想いを込めた点はございますか?

フィンランドの絵本は、文章が長いものが多いのですが、長い文章をよりコンパクトにすることに苦労しました。作者と相談しながら、絵で伝わる部分を省くなど工夫をしました。また、絵も内容も楽しい絵本ですので、その楽しさやわくわくが伝わるように、言葉を選びました。

3.この絵本は、多様性がテーマとなっていますが、フィンランドの暮らしの中で感じる多様性は何か思い浮かびますか?

先日、日本の大学生たちを連れて、娘が通っていた保育園を見学しにいきました。まずは朝のミーティングを見学したのですが、3-4歳の子供たちが一枚のラグの上に座って、先生と1週間のスケジュールについてお話していました。先生の質問に、子供たちが次々と手をあげて、思い思いのことを言葉にします。「あれ、言うことわすれちゃった」「このまえ、自転車で転んじゃったの」など、子供達から出る疑問や言葉に「うんうん、そうなのね」と小さな声に耳を傾けようとする姿勢に感動しました。安心してお話ができる環境で、違うことは自然なこと、みなが同じでなくてもいい、自分らしさを大切にしようとするあたたかい空気が流れていました。小さな声に耳を傾けることが、自分らしさを育てることにつながり、それがいずれ社会の多様性の豊かさとなるのだろうとふと思いました。

4.『ひっこし』で何か思い出されるエピソードはありますか?
今から13年ほど前にユッシ(夫)の引越しを、本人がいない状態で手伝った経験があります。ユッシは入院中だったので、友人や親戚がたくさん来てくれました。その日に初めて会った人たちもいたのに、助け合いが生まれ、11年分の荷物を無事に新居に移動させることができました。「Kaikki järjestyy」(すべてはととのっていく/うまくいく)というフィンランドのことわざが思い浮かぶエピソードでした。
5.島塚さんにとって絵本とはどのような存在でしょうか?

絵本や紙芝居が大好きでした。母が子供向けの英会話教室を開いていたのですが、絵本のカセットをいつも聞きながら、空想の世界にどっぷり浸っていました。特に北欧の物語や民話を好んで聞いていたのも、今思うとなんだか不思議な偶然です。

歳の離れた姉が二人いる私は、時に母親が3人いる一人っ子のようでもありました。子供時代は、ひとり遊びの時間も多く、半分空想の世界に暮らしていたといっても言い過ぎではないかもしれません。絵本を通して、世界のことも知れましたし、想像力も培われたと思います。絵本は自分に寄り添ってくれる友達でもありますし、自分の根っこを作ってくれたのが絵本だと思っています。そんな時を超えて、ずっと心に寄り添ってくれるような絵本を作っていくのが夢でもあります。

編集・本文デザイン

オノイチコ

編集者。おもに絵本や小説(児童文学・YA文学)の編集、
絵本のデザインなどを手がける。
北欧が大好きで、喜び勇んで本作に参加。

コメント

ネオンカラーがあざやかで、かわいらしさとかっこよさを両方感じさせる、原書のイメージを日本語版でも表現したいと考えました。本文書体はシンプルな書体を、表札などのそれ以外の書体は遊び心を感じさせる書体を選んでいます。

「あさひ・ゆうひ」姉妹、「ミスター・ブルー」など、登場人物の名前が、ちょっとしたかけ言葉というか、意味があるんです。日本語で子どもたちがわかるようにと島塚さんが知恵を絞ってくださって、「思いつきました!」とご連絡をいただくたびに、「おお!」となりまいた。島塚さん、岩城さん、私(ヘルシンキ、和歌山、東京!)の3人でオンラインで文章のリズムを確認するための読み合わせをしたことも。とても楽しく参加させていただきました。読者のみなさんにも私たちが楽しんで作ったことが伝わるとうれしいです。

photo

グラフィックデザイナー(日本語版デザイン)

小熊千佳子

アートディレクター・グラフィックデザイナー。
グラフィックデザインを基軸にブックデザイン、VI,サイン計画など幅広く活動。
出版活動として2017年よりYOU ARE HEREを主宰。

コメント

今回原書の雰囲気を再現するため、タイトルの文字を描かせていただきました。黄色と赤の少し混ざり切っていない絵の具の感じを出しながら、エップのやんちゃな楽しさを感じさせるようなイメージがなかなか難しく、何度も描き直したことを覚えています。原書の印刷は特色を使用したとても綺麗なものでしたので、色味を再現することがとても大変でした。日本語版はカバーを巻くことで原書のイメージに近づけることができ、カバーの裏面にワークショップシートをつけることで、より絵本を楽しんでいただけるような仕掛けを加えることができました。今回制作に参加することができてとても嬉しいです。たくさんのお子さんに届くことを願っております。

Store List取扱店舗一覧

『エップのひっこし きいろいおうちのゆかいな人たち』
作: Jenni Erkintalo 、 Reka Kiraly
訳: 島塚絵里
日本語装丁: 小熊千佳子
編集、文字デザイン:オノイチコ
Original Finnish title: Talo kulman takana
サイズ:21cm x 24 cm
ページ数:32
発売日:2024年5月31日
発売元: KORVAPUUSTI

購入する